月と太陽と星と水瓶と

飛鳥井誠一のお仕事や近況です。略歴はこちら> http://profile.hatena.ne.jp/A-sky/

コラボキャンペーンという現代エロゲのターミナルケア

1,二つの独立系エロソシャゲのコラボキャンペーン
2,パッケージ販促としてのアプローチ
3,ハードエロス系の断末魔
4,エロゲはラピュタ

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2022年11月、私が触っているFANZAGAMESのタイトル「エデンズリッター-グレンツェX-(以下デンズリ)」と「マジカミDX(以下マジカミ)」がそれぞれ興味深いパッケージアダルトゲームとのコラボキャンペーンを展開されました。

デンズリはTriangleの「魔法戦士FINALIGNITION」、マジカミは「夜勤病棟」。どちらもエロゲー隆盛期に始まったエロ重視のヒットシリーズという共通項とリリース時の購買層が異なるという相違点があります。
デンズリの魔法戦士コラボは或る意味必然です。主人公が異なる世界の存在を召喚する錬金術師(魔導士)という共通項以外にも変身ヒロインモノであるという事、触手や(SM)調教系エロでヒロインが堕ちる過程を楽しむのがウリであるなど昨年の「魔法少女アイ」以上にコラボするしかなかったと言わざるを得ません。ましてや魔法戦士シリーズの「本当の意味での(ここは後述)」集大成のリリースが11月末にありリリースに向けた盛大なお祭りとして処女作の「魔法戦士スイートナイツ」から知るファンにとっては感無量です。
シナリオも魔法少女アイの時はデンズリ世界へアイ達が迷い込むようなアウェイ展開でしたが今回はそれぞれのプレイヤーキャラが入れ替わりそして互いの世界のヒロインを「お持ち帰り」を目論んで攻略していくという作品のカラーを活かした展開です。
マジカミはエロゲーコラボの際に過去の名作を選ぶ傾向が強く、過去にはエルフの下級生、おやぢシリーズとコラボし、通常のミッションをこなすことでマジカミのヒロイン達がコラボ先のシチュエーションを演じるイベントの前半を見ることが出来る仕組みになっています。
個人的にはおやぢシリーズコラボが印象深く、いきなりバッドエンドの回収(臭作とマジカミのシナリオ1期を知っているとわかる展開)がなんとも。イベントの後半は各ヒロインごとのパックでお買い求めとなります(ただしお高め)

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デンズリとコラボしたTriangleの魔法戦士シリーズがこのタイミングでコラボしたのはデンズリが魔法少女アイとコラボしてから1年近く経ち頃合だった事と作品のカラーが近似していたことの他にパッケージ製品最後になるであろう「魔法戦士FINALIGNITION」のリリースを11月末に控えていた事も大きかったように思いますしここからソシャゲとパッケージそれぞれの様々な可能性を想像できました。
エロゲ隆盛期でも発売前の販促キャンペーンというと早期予約特典がコレとかフルボイスのが当たり前になってからは「発売まであと何日」のボイス公開とかぐらいしか記憶に残っていませんし、大ヒットしてメディア展開出来てもエロの壁で連動できなかったりとかギクシャクしたものばかりだったように記憶していますので今回の、作品のカラーに合った他のプラットフォームのゲームに新タイトルの発売前という絶好のタイミングでコラボ展開というのは現時点で最高の施策だと思います。
ただこれは本当に幸運な組み合わせだと思います。「エロソシャゲのコラボなんて他に幾つもあるじゃん」という向きも当然いると思いますが今回のこれは全く背景が異なります。そして、次章のハードエロス系の厳しい立場も浮かんできます。

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まず、今回のデンズリ・マジカミのエロゲコラボは他によく見かけるコラボと異なり、運営会社のコントロールによるものであるという点が挙げられます。コラボの内容の管理はそれぞれの会社のQCが通ってソシャゲ以外のユーザーにも(ある程度)配慮した外向きなのに対し他のエロソシャゲのコラボキャンペーンの多くがクレジットにある同じ名前が確認できます。ぶっちゃけ、運営がFANZA系列のタイトル同士で内向きなのです。具体的に説明すると前者は魔法戦士シリーズはやったことあるけどデンズリは絵やシナリオが濃そうで敬遠していた人やその逆向きにアプローチできるのに対し、後者はFANZAソシャゲのタイトルAを遣っている人にBやCもやって(FANZAにもっとお金落としてくださいよ)というものです。
そして今回気付いたのは夜勤病棟コラボはもう運営元の担当者の個人的趣味によるであろう力業というのと、他にもあるSM・凌辱・学園もののハードエロスのタイトルがコラボできる人気タイトルはなかなか無くそういうタイトルが得意(と言っても最盛期に比べ既に激減していますが)なブランドはデンズリやマジカミとは勿論他の独立系エロソシャゲとのコラボは厳しくこのまま消えていくのだろうなと言う事です。同様にファンタジーという共通項で浮かぶタイトル・ブランドはあってもそれでかつ変身要素というとそうそうないのでやはり厳しいと思います。
〈脱線ですが私は昔ほどではないですが今でもVenusbloodシリーズを擁するDualtail/Ninetailさんの大ファンという自負はありますがVenusbloodシリーズがデンズリとコラボとか魔法少女タイトルであるラヴィリオンがマジカミとというのは無理だと思います。
VBORBITがもうちょいダークでまだ続いていたらワンチャンだったかもしれませんが(やめなさい)〉

エロゲがパッケージで販売できる場所も減り、通販やダウンロード販売というルートも弁えないあんぽんたんがやらかして遠隔販売に必須の決済業者を激おこさせるせいで厳しさを増す一方です。その中で昔から細かいレギュレーションで世間の隙間を縫って続いてきたハードエロス系の中でもガチな鬼畜エロ・「学園」エロは風前の灯火ですがもう大きな花火を打つことも出来なければ新規のユーザーを増やす施策ももう打てる余地はどこにもないのです。それが先程の(消えていく~)と思った理由です。

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こういう話になると必ずと言っていいほどネットで「エロゲは滅びぬ。何度でもよみがえるさ」とどこかのムスカみたいな台詞を吐く人が現れるんですが残念ながらそれは無いと思います。エロゲの2000年代の勢いはその中心地秋葉原で色々な仕事しながら間近に見続けたわたしにもすごいものでその頃こんな日が来るとは思いもしませんでした。
しかし、その頃からPCの高性能化や様々な要因で開発費の高騰や製作期間の長期化、内容の肥大化による組織の複雑化や乱立によるトラブルなど問題は出始め私も巻き込まれた事が有ります。そしてそれに対し、一致してなにかが行われることは無く、一般コンテンツ分野への人材流出や海外からのアクセス変化で社会環境の変化との齟齬は深まり、もはやエロゲの世界は爛熟から枯渇に移りつつあるとしか言わざる負えないです。ムスカのセリフに対し、シータがラピュタ衰亡の理由を返したようにエロゲも社会という地に足をつけたモノづくりと組織運営、業界維持が出来ず、社会の厳しい目から背を向け続けた結果居場所をどんどん無くなったのが今の状況の一因だと私は思います。(無論、店舗からネット、PCからスマホへの重心の変化もありますが))
しかし、荒れ野や砂漠でも植物や生き物は居る様に生き残るブランドは存在すると思っています。私はその生き残る所が少しでも多い事を祈る位しかできません。


とりあえずデンズリとマジカミのコラボには今後も期待していますというメッセージで今回は締めたいと思います。