月と太陽と星と水瓶と

飛鳥井誠一のお仕事や近況です。略歴はこちら> http://profile.hatena.ne.jp/A-sky/

ハイ!ろぉど?的Coast to Coast①

C2C

シートゥーシーと聞いて
・Consume to Consumerが浮かぶ人は経済・流通関係
・イギリスの鉄道が浮かぶ人は鉄分高め
・Coast to Coastが浮かぶ人は自転車(ロングライド)な人

今回は、3番目の自転車な話。

高校生時代のマウンテンバイクそして大学サークルでのツーリングから、久方振りに自転車趣味を復活させて1年。
その時選んだCerasusでなんだかんだと100㎞オーバーも達成。
ぶっちゃけた話、近所のディスカウントストアが出したロードルックな自転車でまあ、内容の割には安かったのですが自社内施設で研修させた整備士配置とかいう割に初期整備もせずに引渡しとかされて自分で整備したり色々弄る内に最近お世話になる店と出逢って面倒看てもらうようになったりいろいろあったなぁ(遠い目

今回のそもそもの切っ掛けは、昨年Cerasusに乗る前後から自転車モノの話を書いてみたい考えが浮かび、ロードレース・バトルは幾つかある(弱●ペダルやは●めとか)ロングライドはいわずもがな(平仮名なアレ)だったのでここ数年の興味でもある酷道や廃道探索と組み合わせてみようと思い付き、酷道の中でも好きな国道152号線周辺を舞台にしてみたらと思い付いた所から始まる。
書き始めて一部は投稿したもののそれと前後してプライベートが完全に崩壊して大きく体調を崩し、更新が宙に浮いているのが現状。

で、引越しやら仕事などプライベートを立て直しながら「仕切り直すなら主人公たちに走らせようとした道をきちんと走った方が良いよな」と計画を始め、ふと「浜松から上田はやりすぎかもだけど諏訪まではやろうかな」と呟いたら「あれ?Coast to Coastやらないんですか?」と背中押されたのが今回の伏線に。

いきなり雨ザーザー!浜松で道を間違える!

5/3
起きると土砂降り一歩手前の雨、前途多難。
気を取り直して準備を始め、包装ラップで防水対策をして家を出ると30分遅れ。某駅で自転車バラシて東京へ向かうが追い越していく上野東京ラインの電車の混みっぷりに嫌な予感。
東京駅着くと6時半だというのにすごい混雑。やはりGWだ。事前に準備していた切符でサッサと改札くぐると浜松に一番早く着けるひかり号のホームへ

一番出入りが少なそうな出入口脇に固定して乗車。が、結果としては失敗で思いのほか邪魔っぽかったみたいで申し訳ない事に(ベビーカーの人とか大変そうだった)車窓に映る景色と空は徐々に行楽日和っぽくなっていく。デカい川をいくつも渡ると静岡に入った気がする。

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愛車のニックネームの由来となったヒロインをあしらったウェアを纏い自信満々






浜松で降りるとそのまま改札へ。最初は東海道線弁天島天竜川で行ってスタートしようと思ったものの乗り換えが面倒になり浜松スタートへ。
駅前では法被に身を包んだ男性やら飾りがされていて祭が有るらしい事は分かる。が、これが最初のトラップにつながる事になろうとは思いもよらなかった……

組み立てているとお仲間みたいな輪行の人も見掛けたけど小心者なので声かけられずに出発。走り始めの交差点で地元民っぽいオッチャンに「カッコいいなオイ」と声掛けられるいや、このウェアですので可愛いと言ってほしかったかなと。さて、川沿いに出て流していくとあっという間に長閑な郊外へ。車や街の喧騒が無く鳥のさえずりが響き、目の前をイタチやカニが横切っていく。
同じ政令指定都市とは思えない。

R1バイパスを潜り南進すると最初のターニングポイントが近づいて……いやちょっと待て!

祭りの道路規制で迂回指示とかでポイントの公園で誘導している。
誘導の指示が面倒だったのでUターンしたがこれがミスった。
海に近づくつもりが気がつくと新幹線の高架が見える所まで北上してしまい慌てて修正、
丸々1時間ロスする羽目に。
やっちまった後に海に向かう道途中にはガソリンスタンドが「やきとりはじめました」って貼り紙出しててわけわからん。浜松だし餃子じゃないの(そう言う事じゃない)

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「焼き鳥始めました」って冷やし中華ちゃうわ

 

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津波対策のスーパー堤防から眺める大雨直後の太平洋でタッチ



結局ちょうど11時に天竜川河口そばの太平洋に
お触りしてから出発して天竜川の土手沿いを走る。

晴れそうで晴れないけどお陰で汗をかかずに済んで助かる。古風な橋(掛塚橋
)を渡りながら鑑賞して一旦磐田市側へ渡り天竜川沿いに北上する。

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掛塚橋
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月!未成線の路盤!ダム汁ぷしゃああっ!




天竜浜名湖鉄道線と共に山が迫りいよいよ天竜区。山岳区間の幕開け。
天竜二俣駅傍のコンビニで休憩と補給をする。
この後の補給を考え軽く小弁当一つ。これが後々響く事になるとは神ならぬ(以下略


船明(ふなぎら)ダムを越え「月」に向かってみたり幻の国鉄佐久間線橋梁を活用した橋を渡ってみたりして奥へ奥へと進んでいく。途中で幾つか通行止めの看板は見たがGW明けの工事の予告ばかりでスルー。が、秋葉ダム横のトンネル内交差点で県道側へ誘導される。大雨のせいか土砂崩れで通行止めの迂回が発生していた。しかも看板で「30分ごとの交互通行なのでお待ち下さい」とのことだが走って納得。迂回路の県道r285は基本的に離合不可な狭路だった。多少のアップダウンはあるものの走りにくくない道だったので車にペースを合わせてパスする。龍山の瀬尻橋から再びR152へ入り補給地点の水窪を目指す。

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車だと見過ごす素敵な発見。鏝絵

途中の祠の鏝絵(こてえ)に感心しつつ、水窪に入る。が、ここで問題発生。
補給ポイントに予定していた道の駅的な地域施設が臨時休業。うどん屋も閉まっている。ともかくベンチで一服すると観光客っぽいおっちゃんに「ひょっとしてブルべとかやっているんですか。いいですね。私も興味あるんですよ~」と声をかけられる。いや、私がやっているのはただのロングライド敢えて言うならC2Cチャレンジなんだけど。

気を取り直してBICYCLEPLUS誌の記事で見かけた栃餅屋「小松屋」さんに立ち寄って自慢の栃餅を買ったりスイーツ的な生栃餅をその場で頂く。とろけそうな柔らかさの餅と生クリームが印象的だった。

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水窪駅へ渡る歩道橋、秘密の入り口っぽい 手前左が生栃餅

いよいよ、1日目のクライマックスである草木トンネル・兵越峠へ進む。じわじわと勾配と道幅が厳しくなっていく。青崩峠分岐で急に前が開け、三遠南信道になり損ねた巨大な道路遺構が現れる。車では何度か味わったが今回、これを自転車で初めて堪能する。

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割と有名なポイント

鬱葱とした山野の中に忽然と現れた高速道路並みの橋梁と、そこに刺さる勾配9‰の標識が私を威嚇するが気にせず登っていく。まあ、体力と時間的にリミットが見えてきていて青崩方面に寄り道する余力が無かったのも理由。

登り勾配はあるけれど流石元々自動車専用道用に作られただけあって走りやすくあっさりと草木トンネルも通過。自作品の主人公が心折れた未供用の空き地を横目に私は兵越林道へ。日もいよいよ陰って来ていた。

兵越林道に入るとS字カーブやヘアピンが無くほぼ直線でグイグイ高度が上がっていく。目の前に延々と続く登り坂にいよいよ心折れペダルから脚を離してしまう。水分を補給しつつ休み休み歩いて勾配が緩んだ所で再度自転車に跨って漕ぐ繰り返しをして前に進むが脚を止めると眠くなってくる。というか歩くのもかったるくなってきた。ここで、私は補給に失敗したことによりハンガーノックに陥っている事に気付き、エネルギーバーや宿まで取っておこうと思っていた栃餅を食べるが限界まで減ったエネルギーを満たすには程遠く、追い打ちをかける様に急速に気温が落ちる事で体力の低下も起きていく。
峠まであと少しの筈だが先に進めず呆然としている傍をSCOTTを駆るローディなお兄さんが通り過ぎていく。せめて峠のてっぺんまで乗せてもらえそうな軽トラやトラック、そもそも車も通らない。最後の力を振り絞り歩き出す。するとそれまでほぼ直線だった林道が急な左のヘアピンカーブで高度をさらに上げ始めた。過去に車で何度か通った記憶が頂上まで1㎞ない事を告げる。
ビンディングシューズでペンギンのような歩みで何とか登り切った頃には空はほぼ群青色に染まり茜色は僅かに遠くの稜線に残るのみだった。
私は想定した最悪に近い条件下の初ダウンヒルに意を決してスタートし、宿へ急ぐ。
青崩峠により断絶したR152に下る途中の此田(このた)集落に何とか辿り着き、集落で唯一の民宿に辿り着く頃には真っ暗で僅かな街灯がこれほど頼もしく思える事は無かった。

宿に着くとお風呂にありつき、中央構造線のエネルギーを取り込んだかのような濃厚な味わいのシイタケに圧倒されつつ晩御飯をパクついた。